5弦バイオリン用の弦

5弦バイオリンは、ふつうはバイオリンとビオラの合体したものです。

バイオリンサイズの楽器がほとんどなので、バイオリン弦をE A D Gと張り、ビオラのC弦を5弦目に張るのがふつうだと思います。しかし、日本で通常流通しているビオラ弦はロングスケールだけで、これは15インチ (約39cm)以上のサイズの楽器用ですから、弦長が長すぎてC弦だけテンションが弱くて弦どうしのバランスが悪い。私も、さまざまな弦を張ってみたり、ギター弦を張ってみたりしましたが、解決にはいたりませんでした。現在は、海外からインターミディエイトサイズ(13'〜14')のビオラ弦を購入したり、ダダリオやヤマハが出している5弦バイオリン用の弦を入手して使用しています。これだと、弦長がバイオリンとほぼ同じですから、テンションのバランスや演奏性などには全く問題がありません。

もう一つの利点は、エレクトリックバイオリンでの使用を前提として発売されている点です。とは言っても、ピックアップとの相性などで100%大丈夫とも言い切れないのですが、今までの経験では音が出ないなどのトラブルがあったことはありません。特に、ZETAのJAZZモデルのピックアップなどを使用している場合には、無難な選択であるとは言えるかと思います。

5弦バイオリン用の弦(C弦)が生産・販売されている弦
D'AddarioHelicore, Zuex
YAMAHAEV5S
Super-Sensitive Sensicore, Pinnacle, Stellar, Red Label, Old Fiddler Line
ThomastikVision
  • YAMAHAのEV5Sは、Super-sensitveのSensicoreのOEM特注品です。若干の仕様の違いがあります
  • Super-sensitveのSensicoreは、C弦以下のF弦、Bb弦もあります。
    また、5弦オクターブバイオリンと言う、5弦バイオリンのオクターブ下のチューニング用の弦もあります
  • Vision、Helicore、Zyexは、輸入元の白河総業からは表だって発表されてなく、カタログにも載っていませんが、楽器店経由で取り寄せが可能です。
  • 他に、3/4スケール用のビオラ弦 (intermediate sizeとか13'-14' sizeなどいろいろ表現がある) を使う手もあります。が、輸入元の取り扱いがないだけでなく、残念ながら4/4以外のスケールがある弦は非常に限られています。入手は、インターネット経由での通販が簡単で安価です。私はアメリカのバイオリン屋さんからですが、メーカーによっては輸出国制限をしているものがあるので、注意が必要です。

    もう一つの注意点は、弦の設計がエレクトリックバイオリンでの使用を前提とされていない点です。ZETAのJAZZモデル、バーベラ、ヤマハのEVシリーズなどのピックアップのように、ブリッジの各弦の直下にピックアップが仕込んであるタイプは、弦に導電性がないと音が出ない場合があります。そうでないものの場合は、音は出ますが、「ブーッ」といういわゆるアースノイズが乗ってしまうことがあります(そういう点でガット弦は除外してありますが、ピックアップにより使えるケースもあります)。私が確認している範囲で導電性の金属被服がしてあるのは太字のものですが、メーカーの都合で予告なく変更される場合もあるので注意して下さい(それを知らずにレコーディング直前で張り替え、現場で音が出なくて大変な思いをしたことがあります)。

    13'-14' サイズがカタログに載っている弦
    D'AddarioHelicore, Prelude, Pro-Arte
    PirastroChromcor, Piranito
    Super-Sensitive Octava, Red Label
    ThomastikDominant, Superflexible

    [2003/4 追記]
    先日、ヤマハのエレクトリックバイオリンの開発をしている方から、ヤマハのエレクトリックバイオリン用の弦についての情報と共に試奏用の弦も送っていただきました。ちょうどSEAMUSでのレコーティングとライブが続いてあったので、存分に試すことができました。

    ヤマハの弦はアメリカのSuper-SensitiveのSensicoreにヤマハからのリクエストを加味した別注品なのだそうです。特徴は、アースがしっかり取れるように巻き線と弦端のボールとの接触をしっかりと取るようにリクエストしていることと、少し太めの音色が出るようバランスしたC弦だそうです。

    アースの件は私も不思議に思っていて、今回のことで氷解しました。原田さんにも確認してみたら、やはり巻き線がしっかりとボールのところまで来ている弦はあまりないそうです。金属製のボールがアースに落ちているのに、なんでアースノイズが、と思っていましたが、接触していないのではあたりまえですね。少し太めの音色は、さほど私には感じませんでした。と言うのも、今までビオラ弦のスタンダードサイズを張ったりしていますし、そのときのテンションの緩いボワッとした音の方がその点だけ限って言えば太いからです。それよりも、弦長のバランスの取れた弾き心地と反応のきれいなことの方が強い印象に残りました。

    Sensicoreは、私も5弦ビオラで使っています。私の印象では、弦の方向性が最近のハイテク素材弦とは違っていて、どちらかというと従来のガット弦とかナイロン弦に近づきたいように感じます。中域の密度が濃い音色で、ヘリコアとは違うところに音色のピークがあるので、性格の違いはハッキリしています。ダダリオの弦はザイエックスもそうですが、感触が独特なので、どっちがいいとか比べられる感じがしません。二つの弦で明らかに差があったのは、チューニングのなじみの早さと安定度ですね。ヘリコアはだいたい一日も経たないうちに馴染んだ感じになるのですが、ヤマハは二三日はかかる感じです。まぁ、ヘリコアが異例に早い弦ですし、なじみの速度は通常の弦と同等なので欠点とも言い難い。そう言う意味では、最近のハイテク弦はみな馴染みが早くて、一度その感覚を味わってしまうと元には戻れない感じです。

    耐久性は、どちらもそう大きな差はないようです。もっとも私はどちらかというと乾燥肌で、手に汗をかくことよりも弦上で指が滑ってしまうことの方が悩みなくらいなので、元々弦の保ちはいい方ですからあまり参考にはならないかも知れません。

    値段がセットで6,730円なので、ちょっと高いかな。でも、ダダリオのヘリコアの5弦セットは8,500円くらいなので、それと比べてしまうと高いという印象はなくなってしまいます。ヘリコアは、私の周囲の方があちこちの楽器店に交渉した結果、少しづつ扱いが始まっていますが、輸入元の体制から見るとまだまだ安定供給が見込める状況ではありません。アメリカからの通販もどうやら輸出制限があるようで、店によっては断られるケースがでています。イギリスからわざわざ輸入した方もいますし、なかなか簡単な状況ではありません。そう言う意味では、ヤマハはおそらく日本全国で簡単に入手できるでしょうし、まず一度手にしてみるにしても好都合な状況です。

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