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 チューブのアンプ
 チューブというのは、真空管のことです。ちなみにイギリスではヴァルブというようです。楽器用アンプの世界ではいまだに「真空管のアンプの方が優れている」とされていて、真空管を使わないアンプの宣伝文句にも必ずと言っていいほど、真空管アンプとの比較した部分が見受けられます。特長はいろいろ言われていますけれど、私の感じる長所は、音に奥行きがあり、しなやかさがあることです。小さく弾いていても存在感があって消えてしまわない。グッとエネルギーを込めると、いったん沈み込んで跳ね返してくるような、バネの強さと言うべきものが感じられるのです。トランジスターのアンプではなかなかこういう感じには鳴りません。音量を下げると存在感も小さくなる、ここ一発というときも沈み込みも小さく反発も小さい、パッと聞きはよくても長い時間弾いてると差を痛切に感じてきてしまいます。

 私が使うアンプは、いまのところライブ用とレコーディング用と分けています。ライブ用は2種類あり、どちらもMesa Boogieです。もっといいのがあれば替えたいのですが、とりあえず音の良さと耐久性とのバランスでこれを使っています。ふつうはMark3(重いので内蔵スピーカーを外してある)とElectro Voiceのスピーカーを入れた箱1個の組み合わせです。Electro VoiceのスピーカーはEV-12Lと言う型番のだと思いますが、Mwtoがいろいろ使ってみた中では一番クセがなくてローもしっかりでるし、扱いやすいものだと思っています。Boogieの欠点(と言うより難しいところかな)は、ある程度の音量を鳴らさないとバランスの良い音色にならないことです。他のアンプでもこの傾向はありますが、Boogieは特に強いようです。

 もう一つ、同じくMesa BoogieのQuad Preampからレベル/インピーダンス合わせのためのBehringer MX602ミキサーを通し、YAMAHA P5000SパワーアンプでEV-12Lのスピーカーを1ペア鳴らすシステムもあります。こちらのシステムだと、大音量をしっかりと出すことができ、対応できる音量や環境も広いです。歪んだ音からクリーンな音まで音づくりの幅も広いのですが、調整できるポイントが多いので難しい面もあります。長く使っているので慣れましたが、運搬はもちろんセッティングや片付けも手間はかかります。

 レコーディングではFenderのChampを使っています。片手でひょいと持てるくらい小さく軽い、個人練習用アンプです。Champは80年代前半くらいのだと思いますが、銀パネルのごくありふれたもので、中古でも数万円くらいでよく見かけるものです(Human Gearと言うアンプ屋さんで多少手を入れてもらっていますが)。いまのところこのアンプで弾いたソロがCoccoを初めとして一番世にでています。スピーカーの口径が小さいので、ピーキーな音では曲に合わないときとか、クリーンな音や太い音にしたいときは、EV-12Lのスピーカーにつなぎ替えます。録音された音は充分にパワフルで太く存在感があり、音決めも早いのですぐに演奏できます。ちなみに、今までレコーディングで使ったなかでベストのアンプは、1964年頃のVOXのAC-30で、ヒューマンギアでレンタルしたものでした。ボリュームしかコントロールできる部分はないのですが、クリーンな音から歪んだ音までそのつまみ一つで充分に作ることができました。

 ライブやリハーサルでレンタルするときは、出来るだけ性格がオーソドックスなアンプを選ぶようにしています。ROLANDのJC-120やFenderのTwin Reverbあたりが無難なところですね。マーシャルはJCM-800だとだめですが、JCM-2000はけっこうよかったです。最近いろいろと種類が出てきたエレクトリックアコースティックギター用のアンプは、いまのところ相性のよいのには出会ったことはありません。
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