N O T E S

 ZETA "Classic Model" 5-string Violin
 現在では、このクラシックモデルは廃番で、ボディが洋梨のような形をした'JAZZ MODEL'だけです、と言うより、このCLASSICモデルの方が特殊なモデルだったようです。違いはボディの形だけです。音もほぼ同じようです。ただ、Mwtoのはごく初期のモデルなので、最近のものはかなり改良され、ずいぶんと軽くなっているところが大きな違いです。

 ソリッドボディなので、胴体は共鳴の役割はほとんどしません。むかしよく見かけた練習用のサイレントバイオリンのようなものです。素で弾くと弦がチーッと鳴るくらいの音がするだけで、弦の振動をピックアップで拾い上げたものが電気信号として送り出されてきます。このタイプの楽器の場合、サウンドのほとんどの部分がピックアップによって決まってしまいますが、ZETAはもともとピックアップの開発がメインだっただけあり、変なクセが無く、太く、暖かくて、コントロールしやすいサウンドを持っています。

 欠点は、どちらかというと機械部分よりは楽器の部分にあります。デザインはいいのですが、楽器としての詰めが甘いところがあり、演奏や、使い勝手に不自由が生じてしまっているのです。まず、ペグを回すのに六角レンチ(しかもインチサイズ)が必要なこと、重いこと、基本設計のせいで弦のテンションが低いこと、などがあげられます。チューニングは六角レンチでおおまかに決めた後、テイルピース側のアジャスターで決めるようになっていますが、何かの拍子でアジャスターの調整範囲以上に狂うことも珍しくなく、そうなるとすぐにはチューニングが直せません。六角レンチは楽器を持ったままでは使えないからです。曲の途中で狂ったときなどはお手上げになってしまいます。現在は通常のペグがついたモデルもあるようですから、もし入手されるならそちらをおすすめします。

 また、弦のテンションが低いことは、弓であまり圧力をかけられない、アコースティックバイオリンのイメージで弾いてしまうと音が破錠してしまうことにつながり、演奏上の制約が出てきてしまっています。あと推奨の弦 ( D'AddarioのHelicore)以外だとあまりよくない。弦がピックアップに直接触れているので、導電性の材質の弦でないと音が出なくなります。初期にはPirastro "Chromcor"を使用していたのですが、ある時からA線の材質が非導電性のものに変わってしまい、知らずに弦を替えてレコーディングに行き、大変な目にあったことがありました。駒の足にネジが切ってあって、高さを調整できるようになっているのですが、あまり高くすると弦とピックアップの接触が悪くなるようで、いろいろ試したあげく現在は2/3位の高さにしてあります。弦のテンションから言うと、めいっぱい上げても足りないんですけどね。

 ピックアップの音は、アコースティックバイオリンとはかなり違う音なので、アコースティックバイオリンの延長線上の音を求めてしまうとずれが生じるでしょう。どちらかというとアコースティックバイオリンではまったく出せない世界の音を求めるのに向いた楽器だ、と言えると思います。もう少し音に張りがあるといいのですが、これは弦のテンションが低いせいだけではなく、ピックアップの構造や特性もある、と思われます。

 音量が大きいバンド、ハードなサウンドが欲しいとき、ディストーションなどのエフェクターを使いたいときにこちらの楽器を使っています。音がバイオリン的なイメージからは離れてしまうことも多いので、たいていギターと間違えられているようです。ロックっぽい表現をしたいときなど、自分の気持ちと非常に近いところで演奏できるので、この楽器でしかできないことはたくさんあります。この楽器に出会ってこそ現在のMwtoのイメージが作られた、と言ってもいいくらいです。

 この楽器は、かならずギターアンプにつないで使っています。ラインでは腰砕けのヘナヘナな音しかしません。アンプもできるだけチューブのアンプを使うようにしていて、PAやレコーディングにもスピーカーの音をマイクで拾ってもらっています。エフェクターは、ディレイ、ピッチシフター、ディストーション、ワウワウ、といったものを使います。

 ディストーションはElectro-HarmonicsのGraphic-Fuzzをレコーディングでは使用してます。これ以外はちょっと考えられません。あとのディレイやピッチシフターはBOSSのありふれたものです。ピッチシフターは、オクターブ下の音を足すオクターバー的な効果か、原音からホンの少しだけ低くしたのを加えた、揺れないコーラスのような効果のもの、のどちらかがほとんどです。リバーブは、ギターアンプのスピーカーだとどうしても音が濁ってしまいがちな気がして使いません。どちらかというと音の拡がりよりは奥行きが欲しい方なので、ディレイは多用します。
BACK