エレクトリックバイオリンの入手
 エレクトリックバイオリン(Electric Violin)は、扱っている楽器屋さんが多くはなく、エレクトリックギターのようにどの楽器屋でもあるというわけではないので、どういうものか見る機会が限られるでしょう。ネットで検索した方が、たくさんの種類が簡単に見つかります。楽器としてもまだ定番と呼べる楽器がないのが現状ですし、雑誌などに関連した情報がのることもめったにありません。それに、扱っている楽器屋さんでもヤマハ以外を置いているところはあまりない。置いてあっても、セットで数万円の安物の中国製だったりするし、きちんとした楽器をいろいろと弾き比べて決めるのはとても難しいと言わざるを得ません。


 [A]の場合は、(バイオリンは既に持っているものとすると)ピックアップを単体で購入することになります。単体製品としてのピックアップはアコースティックギターを多く扱っているところでは、品揃えの一つとして在庫している楽器店がけっこうあります。また、バイオリン専門店や楽器屋でも大きなところ(クロサワ楽器バイオリン店、島村楽器、ヤマハ、山野楽器など)では置いているのを見かけます。ただし、使いこなし方など踏み込んだ詳しい情報を持っている店員さんに出会えたら、それはもうものすごい幸運なことです。これはお店が悪いのではなく、そう言う人材の基盤がないからです。購入する際には自分で事前に調べて、心を決めていくのが無難だと思います。また、ピックアップを手に入れただけでは思うような音を出せなくて、プリアンプなど周辺機器を用意しないと自分のイメージする音に近づかないことも覚悟しておいた方がいいでしょう。これについても、個々の演奏者の環境でまったく違ってくるので、「これさえあればOK」と言うような機材の組み合わせはないと思っておいた方がいいでしょう。多少なりとも試行錯誤が必要になります。

 [B]については、ヤマハから2005年に新製品が出ました。ピックアップが優秀なだけでなく、この種のものとしては例外的に高価なバイオリンがベースになっているので、企画生産モデルとしてはかなり期待できるものです。楽器屋さんで試奏してみて下さい。残念ながら5弦モデルはありません。その他にはたまたま並行輸入された単体か、中古などで出てきたものくらいしかありません。ここに当てはまる製品がほとんどないからです。アコースティックバイオリンのボディそのものが大量生産になじまないですから、個人が作っている高価なものか、楽器部分が妙に安物過ぎる安価なものか、どちらにしてもお店としては売りにくいものになってしまうのでしょう。エレクトリック導入の最初の楽器として、あるいはバイオリンそのものの入門用としても、最適と思われるこのタイプの楽器がいちばん入手が難しい。アコースティックバイオリンを買い込んでピックアップを組み込んでしまう手もありますが、お店はもちろんバイオリンの職人さんだと電気に詳しくないし、電気に詳しい人だとバイオリンをいじる技術がない、というジレンマにぶち当たります。

 [C]にあたる楽器が、現状では一番簡単に入手できます。バイオリン屋さんはもちろん、LM楽器屋さん(正確にどう呼んで良いのかわかりませんが、エレキギターやシンセなどを置く楽器屋さんです)でも置いているからです。ただ、どこもまだ「置いている」というレベルから脱しているとは言えず、ギターなどのように店員さんの専門的なアドバイスを元に選ぶ、などと言うことは(ごく一部の店を除いて)夢のような話です。また、ヤフオクや通販でたくさん出ているのもここに入る楽器ですが、ほとんどが韓国製や中国製の非常に安価に作られた楽器で、性能からすると物足りないものがほとんどです。ましてセットものなどでは弓はかなり厳しいものが多い。本格的に取り組むには足りない楽器と思った方がよいでしょう。

 

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