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 ラインでは腰砕けのヘナヘナな音
 「ライン」というのはピックアップから拾った音を、直接テープレコーダなり、PAなりに、電気信号の段階で送ってしまうことを通常は意味します。ピックアップから拾った電気信号ははそのままだとレベルが小さすぎるので、「DI (ダイレクトボックス)」とか「ヘッドアンプ」など少し大きくしてやる機材を通すのが普通です。この反対は、ギターアンプなどを使って、スピーカーで空気中に鳴らした音を、録音やPAにマイクで拾ってもらうやりかたで、「エアー」とか「マイクどり」などと言うのが普通です。正確な言葉遣いでもないんですけど、ま、現場ではこれで通じるので。

 ラインでとるメリットとは、ピックアップでとったまま、余計な音が混じらない状態で収音できること(セパレーションがとれる、良い、などと言う)ですね。特にライブではこれが大きなメリットになります。この場合、自分の音は足下などにおいた「転がし」などと呼ばれるモニタースピーカーから出してもらって聴くことになります。色々なバイオリニストに話を聞いた限りでは、ラインを好む人の方が多いようです。特にアコースティックバイオリンにピックアップを付けている人の場合はみんなライン派のようですね。機械のことが良くわからないから、と言う理由が多いようです。最近はエンジニアも慣れてきていますし、ライブハウスでもモニターの回線数が増えてきているので、ヘタに自分でやるよりはお任せにして、自分は演奏に専念と言うのも一つの考え方です。

 Mwtoの場合は、ラインの音がどうも好きになれません。いったん空気に出した音に比べると、ラインの音は確かに低音から高音まで幅広く出ていますし、他の音が混じり混むことも無いのですけれど、どこかパワーや緊張感に欠けた、存在感の薄い、緩くて遅い音に感じてしまうのです。加えて、ギタリストのように、アンプまでが一つの楽器、スピーカーから出る音が私の出したい音、と考え、その方向で各部を調整しているので、途中でとられたものは、私の意図とのずれがある、と言うことも大きいです。ギターアンプで出る音は、特にスピーカーの部分でかなり色づけされデフォルメされたものなので、それをバイオリンの音とするのは抵抗がある人も多いようですが、パワーとか立ち上がりの速さなどは遥かに勝っています。どっちが絶対的によい、と言うことはなく、何を重視するか、ですね。

 ところでZETAのラインの音というのはJean Luc Pontyの「TCHOKOLA」と言うアルバムで聴けるのがそうです。きっと彼の好みの音なんでしょうね。ちなみにこのアルバムおすすめです。ポンティの演奏も、音楽としてもすごくいい、実に気持ちのいいアルバムです。
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